
鹿は角が伸びる時期に体内の栄養が角に集まる。
その角の成分からできる健康食品は滋養強壮の源と古来より珍重されてきた。野生ではなく飼育牧場として1000頭もの鹿を飼っている唯一の会社、ディアー・カンパニーを紹介。
鹿千頭が牽引する会社
島原湾と雲仙岳を望む斜面を鹿たちが駆け回る。
その数、千頭、群れをなして駆ける姿は壮観だ。
その名もディアー・カンパニーという会社がここにある。鹿を成育し袋角の成分から健康食品の原料を抽出している。
「オスの鹿は春にかけて一日2〜3センチの割で角が伸びます。身体中の栄養分が角に集まるこの時期に角を切り乾燥・抽出して健康食品をつくり通信販売や百貨店などの催事で販売しています」と八木紀子副社長は語る。
もともと獣医でもあった八木さんの父親はこの地で牛を飼っていたが、輸入自由化による牛肉価格の下落を予期して30年ほど前に鹿の飼育に転換した。以来鹿の増加とともに牧場の拡大を進め現在は24ヘクタール、東京ドーム5個分の広大な土地にアカシカ、エルクシカという大型の鹿を中心に千頭飼うまでになった。
「自然交配でここまで増えました。鹿の天敵はカラスです。出産の近い鹿を空から狙い生まれたばかりの子鹿を襲います。だから私も有害鳥獣駆除の猟銃使用許可をもらい鉄砲で追い払っていますがなにしろ放牧地が広くひと苦労です」
さらにディアー・カンパニーは数年前から鹿肉をレストランなどに販売している。
「北海道などでは有害獸駆除の目的で捕獲した鹿肉を食べる例はありますが、産業として牧場で大量に鹿を飼う例は日本では多くありません。地元雲仙のホテルでは鹿肉の角煮などのメニュー開発をしてメニューに入れてくれています。将来は牧場見学も加えて地域の観光資源として役立てられないかとも考えています」
実際に角煮を食べてみたが脂っこさがなくお年寄りにも食べやすいのではと感じた。
島原半島は普賢岳の噴火以来観光客が減少してしまい、湯布院や黒川といった九州のほかの観光地に人気を奪われている。
それだけに雲仙岳を臨む牧場に遊ぶ鹿の群れをあらたな観光資源にできないかという地元の期待は大きい。
故郷のために役立てたいという八木さんは意欲にあふれている。