
長崎の広告代理店「アドックス」は、長崎の特産品を全国に販売するためのチラシ作戦で、きわめて費用対効果にすぐれた販促を展開している。 その仕掛け人、飛永星市郎さんを紹介する。
地方を歩くと、東京以上に景気の悪さを実感する。 ただ一口に景気が悪いと言っても、地方は仕事がない、需要が少ないというだけにとどまらない。 プロデューサーがいない、仕掛け人が見当たらない。 この「ソフト不足」こそ、地方活性化の最大のネックではないだろうか。 そうした中、素晴らしい人に出会った。 長崎だ。 長崎駅に直結したショッピングセンター「アミュプラザ」に元気のよいみやげ店が二軒ならび、競うように売上を伸ばしている。 「ながさき角煮まんじゅう」を売る岩崎本店と「長崎ぶたまん」の桃太呂だ。 いまや長崎を代表するみやげもの、特産品であり、長崎市内はもとより全国で開かれる物産店でも主力商品に成長している。 しかしカステラやちゃんぽんなどとは違い昔からあった商品ではない。 実はこの商売繁盛の裏に一人の仕掛け人がいることはあまり知られていない。 飛永星市郎。 彼は長崎で広告代理店を経営している。 「平成2年に起業しましたが、地方経済の衰退で大手のクライアントが廃業や統合して、経営基盤が揺らいできました。そこで他の広告代理店が手をつけないような小さな商店を 大きなクライアントに育てられないかと考えました」
彼はまず角煮まんじゅうの岩崎本店に売り込みをかける。 全国の物産展で出店する際に、角煮まんじゅうを買ってくれた客に商品とともにビニール袋に入れて渡す4ページのチラシを製作したいと持ちかけた。 商品がおいしいと思った客がチラシをみてフリーダイヤルに注文が来ると、その顧客リストに中元や歳暮カタログのダイレクトメールをだす。 飛永さん自身も、増刷するチラシのほかギフトカタログ、梱包用の包装材料などで仕事が増えてゆく。 そうしたクライアントの成長と伴走して、新店舗出店の際の店作りまで手伝うようになったのが、あの長崎駅にある二店なのだ。 この二社をはじめ、飛永さんが手がけてブランドを確立した長崎企業は、現在二十社を越えるまでになっている。 最近、飛永さんが注目しているのが長崎県五島列島の「鬼鯖鮨」だ。 「五島列島は天然の資源に恵まれた島ですが、島内では市場性がありません。魚を獲るだけならまだしも、加工して売っていくとなると無理があります。やはりマーケットを全国に持っていく必要があるわけです。加工場を作って設備をして、高い経費を掛けて都会に売りに行く。大変な仕事ではあるけれど、地方の小さな企業にとって物産展は、おおきなチャンスでもあります。都会の人が求めるものは、地方にしかないものです。地方の宝を、全国に売る。売りっぱなしでは無く、リピーターを創り、増やしていくことこそが、地方零細企業の繁盛の源である。その仕組み作りがアドックスの仕事だと思っています。」 地方の産物をブランド化したり全国展開したいと思っても地方の店にはノウハウがなくどうしていいかわからないと嘆く声が多い。 飛永さんはロゴやマーク、ネーミングから県の補助金融資を受ける方法まで手取り足取り指導して、企業を育てようと考える。 そして、その会社が大きくなったとき、もちろん飛永さんとの取引も増え、共存共栄がはかられる。 地方に必要なのは「飛永さんというソフト」だと実感した。